オシロスコープの校正における高周波エラー発生源

オシロスコープの校正では、垂直チャネルパルステスト時の応答が重要な役割を果たします。このプロセスでは、かなり高周波のコンテンツを運ぶ高周波信号と高速立ち上がりパルスが必要になります。一般的なテスト方法では、高速エッジを使用して、ステップ・サイズの 10 % から 90 % までの遷移時間を監視します。

Fluke 9500C オシロスコープ校正器をセットアップする技術者の画像

また、パルスのアベレーション (プリシュートとオバーシュート) もよく測定されることがあります。パルスソースとスコープ入力の間でインピーダンスが一致していない場合は、パルス形状を歪ませて、結果に影響を与えるリフレクションが発生する場合があります。

Fluke 9500C などの最新のオシロスコープ校正器は、そうした高周波障害の影響を低減する設計になっています。とはいえ、校正技術者や計測技術者は、特にラボの適格性認定と測定の不確かさ解析の文脈においてそうした影響を理解している必要があります。

インピーダンスの一致について

一般に、オシロスコープ校正器に見られるものを含めて高周波信号源の出力インピーダンス 50 Ωであり、正しく終端された負荷全体に発生するレベルに基づいて校正します。ソース側出力インピーダンスまたは負荷側インピーダンスのいずれかに公称周波数の逸脱または誤差があると、負荷全体に発生する信号レベルが乱れる可能性があります。このシナリオでは、負荷はスコープの入力です。

負荷側電圧の計算式:VL = VS * RL / (RS + RL)

  • VS = 電圧源
  • RS = 出力インピーダンス
  • RL = インピーダンスの負荷 (VSとRSをそれぞれこの負荷に接続)
  • VL = 負荷全体で発生する電圧

高周波では、インピーダンスは単に抵抗ではなく、常に抵抗と静電容量、インダクタンスで表されるわけではなく、電圧定在波比 (VSWR) あるいはリターンロス (VSWR にリンク) を使って表されます。

これらのパラメータは高周波では必須でありり、公称 (50Ω) インピーダンスからの実際のインピーダンスの逸脱を示すのに使用されます。負荷 (スコープの入力) 側の VSWR の影響の最小化は、オシロスコープ校正器のソース側インピーダンスを完璧な 50 Ω になるようにすることで実現します (低 VSWR)。

信号レベルの確度に対する不一致の影響は、ソース側と負荷側のVSWR (通常は機器の仕様に記載されている) を考慮することで評価します。不確かさ解析では、この評価を考慮する必要があります。

不確かさ解析の考慮事項

RF やマイクロ波理論の文献では、しばしば不一致誤差の式が登場し、そうした誤差の値は電力の誤差として表されています。

不一致誤差の式

しかしながら、オシロスコープは電圧の観点から校正されるため、不一致誤差も電圧の観点から表す必要があります。誤差がわずかな場合は、電力の誤差を半分にすることで、大幅な確度の損失なしに電圧の誤差相当値を得ることができます。

不一致誤差の電圧表現

一般に、オシロスコープの 50 Ω 入力の VSWR は 1.5 ~ 1 GHz です。オシロスコープ校正器は、低 VSWR 出力を供給する設計になっており、Fluke 9500C および 9540C 4 GHz アクティブヘッドでは標準値はそれぞれ、1.1 未満~ 550 MHz、1.2 未満~ 550 MHz – 3 GHz、および 1.35 未満~ 3 GHz – 4 GHz です。

不確かさ解析では、振幅の確度に対する不一致の影響は、タイプ B の寄与因子 (系統的寄与) の 1 つとみなす必要があります。不一致が原因の不確かさは VSWR 情報から計算し、ルート 2 で割って、他の不確かさの寄与因子と組み合わせて標準不確かさで表す必要があります。

オシロスコープの帯域幅テスト

信号レベルの確度に対する不一致の影響は、テストし、帯域幅測定に反映することができます。ただし、適用方法は帯域幅テストのアプローチ方法によって異なります。最も一般的なのは、低基準周波数の振幅を基準に公称帯域幅周波数で dB 表示される振幅の相対的低下量を測定する方法です。

もう一つの方法として、もっと低い基準周波数を基準に信号振幅が 3 dB 低下する時の周波数を見つける方法もあります。振幅の不確かさから周波数の不確かさへの変換では、スコープ周波数応答の傾きを考慮します。

オシロスコープのパルス応答テスト

パルス応答テストに使用する高速エッジ信号で不一致があると、リフレクションが発生する可能性があります。オシロスコープに表示される波形は、オシロスコープ校正器からのエッジとスコープ入力からの低振幅リフレクションの影響の累積です。

Fluke 9500C などの現代のオシロスコープ校正器の設計は、低 VSWR ソースを供給することでこの影響を最小化しています。一般にリフレクションは、立ち上がり時間よりもパルスのアベレーションに影響することが観察されています。

結論として、Fluke 9500C などの現代のオシロスコープ校正ソリューションは、インピーダンスの不一致の影響を最小化する設計になっています。しかしながら、校正技術者および計測技術者は、その影響を理解し、不確かさ分析においてその影響を考慮する必要があります。不一致の影響はまた、リフレクションを引き起こしパルステストの結果に影響を及ぼすことがあります。スコープ入力に問題があると、過度にアベレーションが観察されることがあります。

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