自動テストですばやく問題を判定、機器からの取り外しは不要
プロセス工業では、スマート比例制御バルブが重要な役割を果たしています。しかし、バルブ性能を正確に評価するには、機器を長時間停止して、バルブをラインから取り外すなどの面倒な作業が伴います。
入力に 4 ~ 20 mA の範囲で信号を印加すると、信号に比例してバルブが開閉し、開度 (トラベル) が変わります。バルブの多くは、フィードバック信号により、実際の位置を開閉率 (%) で示します。この出力は、4 ~ 20 mA の信号、またはデジタル HART 変数 (制御バルブの開度を 0 ~ 100% で示す) で表示されます。
バルブ性能を示すもう 1 つの重要な指標は、バルブが目標の位置まで移動するために必要となる圧力です。たとえば、「12 mA 印加すると 50% 開く」のように、バルブをプログラムすることができます。スマート・エレクトロニクスでは、スマートな圧力調整装置を制御して、制御素子を目標の位置まで移動するために必要な圧力を増減します。
印加する mA 信号を変えて、ミリアンペアの出力信号または開度率 (%) 信号を監視すると、設定した範囲内で制御バルブが適切に作動しているかを判定できます。同様に、バルブの問題を確認するには、4 ~ 20 mA の範囲でバルブに入力信号を印加しながら、最終制御素子にかかった圧力を監視、記録するのが主なテスト項目です。バルブが正常に作動していれば、圧力と mA/バルブ位置は比例します。圧力を上げる必要があれば、バルブの動きが悪いことが疑われます。測定を記録し、グラフ表示すると、原因が明らかになります。信号を記録しておくと、バルブ性能を文書に記録することができます。このテスト記録と結果は、バルブの「シグネチャー」と呼ばれます。
バルブには通常、簡単な手動計器が備えられており、作動時の設定に応じておおよその開度がわかります。しかし、動的に変化する条件下では、計器によりバルブの作動状況を知ることはできず、確度は保証されません。
以下に、印加された電流信号とバルブ動作の関係を参考までに示します。
- 3.8 mA - バルブがしっかりと閉まった状態
- 4.0 mA - バルブはまだ閉まった状態
- 4.2 mA - バルブが元の位置から少し動く
- 12 mA - バルブが 50 % 開いた状態
- 19.8 mA - バルブはほぼ全開
- 20.0 mA - バルブが全開
- 20.2 mA - バルブは全開の状態 (止め具にかかる)
バルブの計器に表示される大まかな測定値
「バルブ側面にある計器にバルブが 50 % の開度と表示されても、実際に 51% なのか 49% なのかはわかりません。正確な値を知ることは不可能です」と、フルークのプロセス・ツール製品マネージャーの Jim Shields は指摘します。「多くのプロセスでは、少しの差が大きな違いにつながることがあります」
最も高度なバルブ性能テストを実施するには、バルブを取り外して、「バルブ試験器」でその性能を確認する必要があります。バルブ試験器は高価なので、工場にはなかなか導入できません。HART 専用の試験器でもテストは可能ですが、セットアップと使い方がむずかしいという難点があります。
実際のところ、あるプロセス機器インストラクターによると、技術者とアシスタント 1 名で 1 日作業しても、正確さを求めればバルブ 8 個 (1 時間にバルブ 1 個) が限界です。これには、アシスタントがバルブを取り外して、技術者に手渡し、技術者がベンチでテストを実施している間に、アシスタントが機械関連の作業を実施するなどの一連の作業が含まれます。つまり、バルブ 1 個のテストに約 2 人時が必要です。
テスト・プロセスの自動化
フルークは先日、バルブをすばやく検査して、作動状態を判定するループ校正ツールを発売しました。このツールは時間を節約し、テスト過程で制御バルブの取り外しは不要です。Fluke 710 mA ループ・バルブ・テスターは、プロのワークフローをあらゆるスキル・レベルの技術者が利用できるようにして、プロセス・ループ校正ツールに期待される機能を実現するよう設計された、最新世代のツールです。
710 には、シグナチャー・テストをはじめ、複数の全自動テスト機能が備えられており、スマート比例バルブの性能を簡単に評価することができます。テストは、最短で 5 分以内に完了します。シグナチャー・テストにより、バルブの状態 (良好、限界、不良) を簡単に把握することができます。
「そのため、スキルがやや劣る技術者がバルブ・テストを担当した場合にも、専門家の介入が必要かを判断できます」と、Shields は説明します。「バルブの取り外しは、モーターの取り外しと同様、大変な作業ですが、その必要はありません」
制御線を取り外し、710 のテスト・リードを接続すれば、シグナチャー・テストが自動的に開始され、4 ~ 20 mA の範囲の信号を印加して、バルブからのフィードバックを記録し、バルブが適切に作動しているかを判定します。また、4 ~ 20 mA の範囲で電流を印加した際に、バルブの制御素子にかかった圧力も記録され、印加された電流範囲全体で圧力が線形 (上昇、下降) にスムーズに変化しているかを確認できます。
バルブの状態を良好、限界、不良のいずれかで判定
Shields は次のように説明します。「バルブの作動に使われた圧力をプロファイルすることにより、バルブが目標の位置、またはそれに近い位置にあったとしても、そこまでの移動に必要な圧力の物理的スパイクを確認することができます」
テスト完了時に、バルブ性能の評価 (良好、限界、不良) が表示されます。さらに 710 にはテスト・データも記録されるため、アプリケーション・ソフトウェアにアップロードすれば、詳細に分析できます。
Shields によると、「技術者がツールの操作法を習得して、テストを実施できるようになると、専門家の介入が必要かを判断できます」
ベスト・プラクティス: ベースラインとトレンド
バルブを最高の状態に維持するには、良好な状態時にバルブ性能を測定して、これをベースラインとするのがベスト・プラクティスです。ほとんどのバルブでは、4 ~ 20 mA の入力信号を使います。そのため、電流出力があるテスト・ツールでは、電流入力信号を印加して、作動範囲全体で制御バルブを駆動します。710 は、ベスト・プラクティスの実現に最適のツールです。
バルブの試運転またはオーバーホール後に、記録をしておくのが理想的です。技術者は、バルブが最適な状態時の「シグナチャー」を記録し、電流出力または信号範囲のパーセンテージを、印加した入力信号に対してプロットします。情報を時間、バルブのタグ番号、テストを実施した日付とともに保存します。次に、校正管理ソフトウェアを使って、この情報を管理します。
バルブの性能シグナチャーのベースラインを記録してから、バルブ性能テストの実施間隔を決めます。用途が過酷か、ライト・デューティかに応じて、テスト間隔を決めます。たとえば、機器に安全停止システムが装備されている場合、3 ヵ月ごとにテストを実施します。
バルブを取り外す場合
プロットされたデータに、非線形のシグナチャーやカーブのずれが検出された場合、バルブに性能や寿命の劣化につながる問題が発生している可能性があります。その場合、バルブを取り外して、整備が必要です。710 にバルブの状態が「限界」または「不良」と表示されたときは、バルブ・コントローラーで調整を実施するか、工程を休止して詳細なテストを実施すべきか専門家の判断を受ける時期です。
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