自動車の電気的トラブルシューティング

電圧降下は、今日の自動車工場で見られる最も一般的な電気的問題の1つです。この記事では、電圧降下の症状、基本的な手順、および接地テストを取り上げ、安全を確保します。

現在、自動車整備工場で最も多く見られる電気系統の障害の1つが、電圧降下と呼ばれる現象です。電圧降下を放置しておくと、特に回路の接地側に影響する場合、電気的に不可解なことを数多く引き起こします。また、悪くない部品を交換するように騙されることもあります。

車両の接続と配線が多いほど、電気システムは電圧降下に対して脆弱になります。

電圧降下を抑えるには、電気的な点検を安全に実践してください。これは、結論を出す前に電圧降下を測定することを意味します。電圧降下は、部品(モーター、リレー、電球など)を動作させるには回路が制限され過ぎている、または正しく動作できないことを示しています。回路が制限されている場合は、修理して再テストしてください。制限を受けていないのに部品が動かない、または正しく動かない場合は、部品を交換します。

電圧降下の例

この例では、配線が外れたり接続が切断されると、電流が流れなくなり、電圧がゼロに下がります。スターター・モーターがオフになるか、ヘッドライトが消えます。

電圧降下の症状

分かりにくく、矛盾することも多い電圧降下の症状は、回路の役割と電圧降下の重症度に応じて異なります。

  • 電気部品が動作しない
  • 電気機器の反応が鈍く、動作が遅い
  • 機器が不安定で断続的
  • 電気負荷が重いタイミングで動作が不安定になる機器
  • ラジオの過度の電波障害またはノイズ
  • スロットルまたはトランスミッション・ケーブルまたはリンク機構の損傷
  • 繰り返し発生するスロットルまたはトランスミッション・ケーブルの不具合
  • 駆動系部品の損傷
  • エンジン性能またはトランスミッション性能に関する症状
  • 始動しない、または始動しづらい
  • センサーまたはコンピュータの電圧が高い
  • エンジンまたはトランスミッションのコンピュータ性能が不安定
  • オンボード・コンピュータのメモリの誤った障害コード
  • A/Cコンプレッサー・クラッチの早すぎる、または繰り返される故障

この症状リストには、いくつかのポイントがあります。

  1. 目視検査では、ほとんどの電圧降下が見落とされます。通常、接続内部の腐食や、問題の原因となっている損傷した配線を目視することはできません。
  2. 電気トラブルで一般的に見落とされている原因である接地側の電圧降下は、これらの症状のほとんどを引き起こす可能性があります。回路または部品は、その接地と同じ程度の性能しか得られません。
  3. 電気系統が高度になるほど、その接地はより重要になります。電気部品の数は急速に増加しており、そのほとんどが別々の接地線を持っていません。代わりに、これらの機器はエンジンまたは車体に接地されます。錆、グリース、振動、不注意な修理は、多くの場合、エンジン/車体からバッテリーへの回路を制限します。
  4. エンジン・センサーなどの多くの部品は、共通の接地点を共有しています。したがって、接地が悪いと、同時に複数の部品に影響を与えるため、診断が複雑になります。
  5. 一部のショップ・マニュアルや診断チャート、または障害ツリーでは、接地を最後に確認することを推奨しています。障害ツリーを登る前に、接地回路をチェックする方がはるかに速いです。
  6. 回路の電圧降下を定期的にチェックしたほうが、長い症状リストを記憶するよりも迅速で賢明です。経験から学んだことがほかに無ければ、症状を追いかけても、定期的かつ徹底的な電圧降下テストに代えることはできません。

経験から、電圧降下を最初にチェックする他の理由が分かっています。電圧降下は通常、接地側で起こり、デジタル・マルチメーターの読み値やオシロスコープのパターンが不正確になったり、奇妙になったりします。さらに、デジタル・マルチメーターまたはスコープを接地不良のシステムに接続すると、テスト機器自体が、機器のインピーダンスに応じて、適切な代替接地を作り出すことがあります。インピーダンスが十分に低い場合、ここから何も得られない可能性があります。機器が接続されている場合、回路は機能し、何も問題を見つけることができません。

基本的な手順

電気的な問題で悩んだときは、深呼吸をして、電気の基本である直列回路を思い出してください。どんなに複雑なシステムでも、常により小さな直列回路に単純化することができます。次に、各回路の電圧降下を点検します。

ねじれ(欠陥)のある電気回路

電気回路では、電気圧力(電圧またはボルト)が回路を通して電気容量(電流またはアンペア)を押し、負荷が動作します。負荷は、コンピュータ、モーター、ランプ、リレーなどの機器です。負荷の動作には、電気圧力(電圧)が使用されます。したがって、電圧は接地側で0近くまで低下しますが、電流はバッテリーに向かって流れ続けます。健全な接地回路の電圧はほぼゼロである必要があるため、一部の技術者はこれを ground zero と呼びます。

接地側の電圧降下は、負荷性能を損ない、負荷の接地側で電圧値が読み取られることになります。

抵抗 — 制限

電気回路での過度の抵抗は、電流の流れを制限する可能性があります。接続不良や断線、サイズの小さい配線は、ねじれたパイプのように、電流の流れを制限してしまいます。ホット側または接地側のどこでも、電流の流れを制限すると、負荷の性能が損なわれます。負荷への影響は、制限の重症度によって異なるため、予測が困難です。例えば、制限された回路内のモーターは、動作を停止するか、または通常よりも遅く回転します。

制限された回路は、a/cコンプレッサー・クラッチを滑らせ、早期に焼損する可能性があります。制限された回路上のコンピュータは、シャットオフまたは誤動作することがあります。腐食や接続の緩み、その他の抵抗で回路が制限されると、電圧も電流も減少します。電圧が低下すると、電流も小さくなります。そのため、接続またはケーブルに電圧降下が見つかった場合、接続またはケーブルが制限されていることがわかります。

断線のある電気回路

図面の回路を見て、2つの重要な点を覚えておいてください。

  1. 自由に流れる接地側は、自由に流れるホット側と同じくらい重要です。
  2. 接地回路の電圧値が0~0.1Vを超える原因は、接地側の制限だけです。

接地線の断線は、電流の流れを完全に遮断し、負荷をシャットオフし、負荷の接地側がシステム電圧を示す原因となります。

電圧降下テスト

電圧降下は電流によって変化します。回路を動作させて電流が流れ込まない限り、電圧降下は測定できません。デジタル・マルチメーターの電池では、ほとんどの回路を通常流れる電流を供給することができないため、デジタル・マルチメーターのテストは通常、電圧降下テストほど正確には制限を検出できません。

配線や接続の破損や断線など、開回路の不具合は、電流の流れを止めます。開回路を修理したら、回路を再度オンにし、電圧降下が続いていないか確認します。電流が流れて回路が再びチェックされるまで、回路全体が正常かどうかはわかりません。

抵抗のない接続、配線およびケーブルが理想的ですが、それらのほとんどには少なくとも多少の電圧降下が含まれます。マニュアルに電圧降下値が記載されていない場合は、以下を最大限度として使用してください。

  • 接続の両端で0.00V
  • 配線またはケーブルの両端で0.20V
  • スイッチの両端で0.30V
  • 接地で0.10V

ほとんどのコンピュータ回路はミリアンペアの範囲で動作するため、他の回路ほど電圧降下に耐えられません。ミリアンペアは1000分の1(0.001)アンペアです。推奨される動作限度は、小電流配線およびスイッチ全体で0.10Vのドロップです。小電流回路のテストには、高インピーダンス(10 メグオーム)のデジタル・マルチメーターも必要です。低インピーダンスのデジタル・マルチメーターでは、低電流回路に負荷をかけすぎて、誤った読み値を示すか、まったく読み取れないことがあります。ほとんどのプロ級デジタル・マルチメーターは、10メグオームの入力インピーダンスを備えています。デジタル・マルチメーターを使用することで、電圧降下を正確に測定できます。デジタル・マルチメーターに自動レンジ機能がない場合は、電圧降下テストには低電圧(0~1V)スケールを使用してください。テストライトは、電圧降下を診断するのに十分正確ではなく、ほとんどのコンピュータ回路を損傷する可能性があることを覚えておいてください。

クイック接地テスト

接地回路の電圧降下は、前述の症状のほとんどを引き起こす可能性があるため、この新しい作業習慣、つまり最初に接地をテストすることを検討してください。チューニング、電気的問題の点検、または始動、充電、ABS、または空調システムのテストを行う前に、エンジンと車体の接地を定期的にテストしてください。エンジンとバッテリーのマイナス端子の間にデジタル・マルチメーターを接続します。イグニッションを安全に解除し、エンジンを数秒間クランクします。または、マルチメーターにデータ記録機能がある場合は、わずか100ミリ秒で読み値をキャプチャします。

過度な電圧降下がある場合は、エンジンの接地回路を修理し、再テストしてください。ディストリビュータのない一部のイグニッション・システムでは、接地テスト中にエンジンが始動するのを防ぐ最も簡単な方法は、燃料ポンプのヒューズを抜くことです。次に、デジタル・マルチメーターをバッテリーのマイナス端子と車両のファイアウォールに接続します。その後、エンジンを始動し、主要な電気アクセサリーをオンにします。電圧降下が大きすぎる場合は、車体の接地を修理して再テストしてください。

エンジンと車体の接地が限度内になったら、診断を続行します。これらの接地を修理することで車の問題が解決されても、驚くことはありません。車両が車体の接地テストに合格したからといって、デジタル・マルチメーターをどこでも安全に接地できるというわけではありません。デジタル・マルチメーターの接地が不十分なため、何時間も同じ所をグルグル回ってしまう技術者もいます。安全な電気サービスのために、両端にワニ口クリップが付いた20フィート(約6m)~30フィート(約9m)のジャンパー線を作ります。ジャンパー線でデジタル・マルチメーターをバッテリーに接地して、車両の後部にある電気燃料ポンプ、照明システム、またはABSコンピュータをテストできます。

コンピュータ接地の欠陥

コンピュータ回路はとても小さな電流で動作するため、標準的な接地テストでは、オンボード・コンピュータの接地限界が明らかにならない場合があります。オンボード・コンピュータに問題があると決める前に、まずその接地を確認してください。コンピュータシステムを操作して、各コンピュータの接地端子をバックプローブします。0.10Vを超える値を測定した場合は、その接地回路をトレースして問題を見つけます。

サーモスタット・ハウジングのボルトなど、容易に妨害されたり腐食したりしやすい場所に、コンピュータの接地が接続されていることがあります。コンピュータのコネクタ端子も腐食する可能性があります。コネクタを取り外し、電気クリーナーを端子にスプレーするだけで、電圧降下をなくすことができる場合があります。

経験上、コンピュータ接地端子のわずか0.30V程度の電圧で、トラブルが発生することがあります。それを電子テストライトで特定する前に、従来のテストライトは過大な電流を引き込み、コンピュータを損傷する可能性があることを思い出してください。コンピュータやセンサーの接地が悪いと、センサー電圧が通常より高くなり、誤った障害コードが発生することがあります。多くの場合、接地不良により、コンピュータやセンサーが電圧信号をゼロまたはその近辺まで引き下げることができなくなります。接地を確認するためにコンピュータにアクセスするのは面倒かもしれませんが、高価なセンサーやコンピュータを誤って交換することはもっと面倒なことです。

バッテリーと負荷の間の電圧損失

デジタル・マルチメーターを回路の任意の部分に接続し、その配線、ケーブル、スイッチ、または接続の電圧降下を直接読み取ります。この例では、一方のデジタル・マルチメーターはバッテリーと負荷の間の電圧損失を表示し、もう一方は負荷の接地側からバッテリーまでの電圧損失を表示します。

車体接地の隠れた不具合

車体接地の欠落には注意してください。他の誰かが車両で作業をしていた場合、車体の接地線やケーブルの再接続を忘れていた可能性があります。車体接地が制限されている場合、電流はバッテリーに戻る別のルートを探そうとします。最も簡単な代替経路は、トランスミッション・シフト・ケーブルまたはスロットル・ケーブルです。この電流はケーブルを溶接するだけでなく、トランスミッション内部のブッシュやベアリング、あるいはホイール・ベアリングに穴を開けたり、侵食したりする可能性があります。

車体の接地線の絶縁材が焼けている、または気泡ができている場合は、スターター電流が配線を過熱したと考えることができます。エンジン接地が制限されている場合、スターター電流は車体接地回路を通してバッテリーに戻ろうとします。経験から、車体の接地回路が電流負荷を処理できない場合、顧客はすぐに問題に気付かない可能性があります。

大電流が流れると、制限された車体接地が部品を妨害したり、シャットオフしたりすることがあります。例えば、ドライバーがブレーキ・ペダルを踏むと、ウィンカーの点滅が停止することが知られています。テストにより、制限された車体接地がウィンカー信号を妨げることを確認しました。その接地は、ウィンカーとブレーキ・ライトからの電流を同時に処理できませんでした。

安全なサービス

安全な電気サービスを実践することで、推測して部品を交換するよりも、電気的な問題を迅速かつ収益性の高い方法で解決できます。デジタル・マルチメーターを働かせ、電圧降下を今すぐ解消しましょう。それは責任のある行動です。

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